【京都市における災害時の避難所について】

 

福祉避難所・妊産婦等福祉避難所・動物と一緒に避難できる場所についてご存じですか。

京都市行政はこれらについて、十分に市民の皆様に周知できているでしょうか?

毎日新聞の記者として熊本地震の被災地を歩き、徳島支局では太平洋沿岸部の地震対策について取材を重ねた立場から、京都市と、市民の皆様に避難所と市政の在り方についてお伝えさせていただきたいと思います。お時間がおありの方はどうぞお付き合いください。

動物と一緒に暮らしておられる方は、ぜひ最後のほうだけでもお読みいただけると嬉しいです。

京都市にとっても、地震災害は他人事ではありません。三方・花折断層という最大マグニチュード7.0が予想される断層が左京区を中心に通っており、その30年内発生確率は最大値で0.6%と、「やや高い」部類に入っています。早急に住民への周知と準備の徹底が必要な状況です。

熊本地震の現場では、冒頭の避難所の存在が十分に周知されていなかったが故に、各避難所の対応が遅れ、人命にかかわる混乱状態になりました。避難所は全て同じという誤った認識のもと、たくさんの方が福祉避難所に押し寄せ、介護・医療に必要なスペースや人員を確保できなかったばかりか、まだ危険な状況にある外を歩いて人が行ったり来たりをする、避難者どうしで揉め事が起きるといった問題が発生したのです。

 

避難はまず「一時避難所へ」

災害が起きた際、まずは地域ごとに定められた一時避難所に避難し、そこから別の場所に設けられた目的に応じた避難所に避難者が割り振られます。

高齢など様々な理由で専門的な福祉の手が必要な方々は福祉避難所へ、中でも妊産婦の方は相応の設備と人員が整った避難所へ移動していただくのですが、この流れについて予め市民の皆様に周知を徹底しておかないと、いざ避難所を開設しても、十分なケアを受けられない可能性があります。

 

京都市では避難所開設の人員が不足・管理者も心もとない

京都市における災害時の避難所開設は基本的に消防・行政主導のもと地域の消防団や自主防災会、ボランティアの方々で実施・運営することになっているのですが、市民の有志任せの現状では、いざ大災害が起きた際、守れる命も守れない状態であると感じています。その理由は以下の三点です。

第一に、陣頭指揮を執る京都市職員が災害発生時、迅速に避難所に駆け付けられる体制ができていません。京都市職員の三割が市外に居住している現状で、開設までのわずかな時間で職員が自宅から避難所までたどり着けるでしょうか?台風など予め災害が予想される場合では、職員は各職場に泊まり込みで出動待機をしていますが、そもそも各職場から現場にたどり着けるかも保証はありません。

第二に、先述のような責任者未到達・不在の状況が起きた場合、避難所の中で、誰が誰を福祉避難所に送り、誰に優先的な治療を施すか、所謂「トリアージ」の判断をするのでしょうか。有志とはいえあくまで一般市民の方で構成された避難所ですから、人命にかかわる判断をするのは非常に難しいと感じます。自身の判断一つで他人の人生を左右してしまう状況になったならば、災害を乗り越えても、その後の人生に大きな影響をもたらしてしまうかもしれません。

第三に、そもそも論になってしまうのですが、自治会加入率が著しく低下している(平成24年度69.8令和3年度65%)現状で、今なんとかギリギリ保っている避難所設営その他の役割分担が今後も維持できるでしょうか。京都市の人口は今、2010年から2020年までの10年で約2万減とものすごい勢いで減っております。高齢の方々が次の世代にバトンタッチできず町内会・消防団や自主防災を維持している現状では、数年後京都市の防災網は完全に破綻するでしょう。

 

自治会の加入率と避難所運営

時代が移り変わり、町内会や消防団に入るのは無理だ、という方も増えてきております。しかし先述のとおり、現状では京都市の防災はほぼすべてが地域任せになっている状態で、加入率低下を放置したままと防災システムの改革もせず放っておいては、大災害が起きた際、京都は熊本地震の教訓をまるで生かせず、救える命も救えなかったまちとなってしまうのです。

 

●SNSの有効利用を提案したい

結局のところ、災害が起きた際に一番必要なのは情報です。自分の住んでいる地域にどんな避難所があり、どのくらい人がいて、物資はどの程度なのか。そもそも避難が必要なのか。こういった情報を市民一人一人が受け取ることができれば、たとえ避難所の運営人数が少なくても、混乱は起こりづらく、最低限の機能を維持することができるでしょう。

母数である人口が減少している現状で、新たに自治会や消防団に加入を呼びかけても問題は解消しません。要は、自身の身は自身で守れるよう、市民の皆様へ避難所の種別をはじめとした情報提供と周知を日ごろから徹底することが、災害時の一番の対策になるのです。

今日本で最も自治体とデジタル技術の協働が進んでいるといわれる福岡県福岡市では、福岡県内関連のline公式アカウント登録者数ランキングの一位が福岡市(184万人)です。(ちなみに福岡市の人口は162万人)これほどまでにたくさんの方が登録してくださっていれば、有事の際行政の判断を各個人の端末に送信することができます。

京都市もlineを開設しておりますが、友達数は20万人(京都市の人口は145万人)、内容は市長が何の番組出るだのどうのといった情報ばかりで市民生活の役には立っておりません(個人の主観です)。

せっかくすでにそうしたサービスがあるのだから、成功している他市に学び、活かして市民のいのちを守れるような使い方をしてはどうでしょうか。デジタルが利用できる世代はデジタルで、それがなじまない世代にはしっかりと(毎月避難所の場所を掲載するくらい頻回に)市民しんぶんを利用して、周知を徹底していくべきだと考えます。

 

備蓄物資の見直しも

これに関連し、デジタルでの情報収集が基本となる世の中だからこそ、各地域の防災備蓄にモバイルバッテリーや充電設備を加え、災害時でもつながっていられる・情報交換ができる体制を支援していくことが、全体で見れば多くの市民生活を救うことになるのではないでしょうか。

 

動物との避難

最後に、本来であればこれだけで別トピックを立てたいぐらい個人的には重要だと考えているのですが、災害時の動物との避難について触れておきたいと思います。

災害時、人間が避難する場所については冒頭から繰り返し触れておりますが、動物に関してはほぼ全く、何も、市内で取り決めがなされていない状況に等しいのです。

人間が入る避難所に、動物は一緒に入れません。アレルギーや、そもそも動物が苦手な方もいらっしゃる中で、同じ建物で共同生活は不可能という判断からです。

ではどうするのかというと、飼い主が

・「動物を外に隔離できるスペースがある避難所に自ら赴き」

・「自前で用意したケージに動物を入れ」

・「自前で用意したご飯と水をあげながら」

・「外にほかの子たちと並べて」

・「自前で用意したシートで雨が降りこまない・寒くないように」

してあげなければなりません。

動物と一緒に暮らしている人のなかで、いったい何割の人がこの事実についてご存じなのでしょう。動物の避難については各地域で話し合い、各地域の飼い主ですべて取り決めよ、京都市は責任持てない、というスタンスですが、このまま災害が起きれば混乱は必至です。

行政が全部を用意しろとは言えません。動物と暮らすというのは自己責任と自己判断だからです。ただ、日ごろから十分な周知もなく、「全部君らで何とかしてと言っておいたやん」というのはあまりに現実的でないと思います。

現在犬・猫を新たに家庭へ迎え入れる際は必ず体内へのICタグの挿入が必要になっておりますが、この時にしっかりと行政側で頭数を管理し、あるいは税という形で協力金を徴収して、災害時のケージ・ごはん、避難場所確保のための予算をつくっておくという対策が必要です。頭数が管理できれば、理想論ですが、避難先の割り振りだって可能になるかもしれません。

 

何か起こってから対策、ではいけない。

崩れた建物、供えられた花束、自宅の前でテントを張り寝泊まりする人新聞記者として働いていた時、発生から二ヶ月の益城町周辺を取材して歩いたことがあるのですが、その際に見た被災地の光景は今も忘れることができません。

特に避難所は想像を絶する状況でした。この後どこにも行き場所がない、家族と連絡がつかない、どう生きていけばいいのかわからない。そんな人が溢れかえり、出入り口では物資の不足について詰め寄られ、うつむいたままの行政職員がひたすら謝り続ける。外ではぐったりした犬を抱えて泣いている子ども、それを辛そうに見つめる親御さんたち。

あんな光景は二度と見たくありません。しかし、今のままではまた、再び、この京都でそれが繰り返されてしまう気がしてやまないのです。

私が市政に対し日ごろから訴えている財政再建もすべては、金の流れを正常化し、防災や福祉といった人命優先の政策に予算を優先して使えるようなまちにしていきたいがため。コロナ禍対策のように、財政政策のように、場当たり的なまちづくりでは、救える命も救えないということを、熊本の現場を(ほんの一部だけですが)体験した立場から、これからも市政に訴えつづけていきたいですし、上記のような対策を、できる限り早く実現したい。その思いで、今後も活動を続けていきたいと思います。

まとまりのない文章でしたが、311日の東日本大震災から12年という日を迎え、京都市・京都市民の皆様にも地震対策についてお考えいただくきっかけになればと、書き連ねました。

 

 

ご参考:

避難所について

https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfu.../page/0000204653.html

ペット防災について

https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfu.../page/0000200267.html